JEV感染耐過ラットにみられる行動異常の本態を明らかにする目的で、平静21年度は以下の解析を行った。 13日齢のF344/NSlcラットにJEV JaGAr-01株を脳内接種し、接種後2~4ケ月飼育した。統計的な有意差を検討するため、感染群として8匹、対照群として7匹の雌ラットを用意し、行動学的解析に供した。オープンフィールド試験(Open-field test)の結果、JEV感染耐過ラットは対照ラットに比較して自発運動量の亢進が観察された。また、高架式十字迷路試験(Elevated plus-maze test)を行った結果、オープンアームでの滞在時間の延長が観察された。これらの結果より、JEV感染耐過ラットは多動および不安水準の低下を示すことが示唆された。 JEV感染耐過ラット脳内ではセロトニン産生酵素であるトリプトファン水酸化酵素の遺伝子発現が上昇しており、行動異常との関連性が推測された。そこで、JEV感染耐過ラットと対照ラットより脳を採材し、前頭前野、線条体、中脳腹側、中脳背側、脳幹、海馬、扁桃体、皮質後方、嗅球、小脳の各部位をそれぞれ部位別に急速凍結した。逆相高速クロマトグラフィーを用いて組織中のセロトニン、ドパミン、エピネフリン、ノルエピネフリン量を定量した結果、JEV感染耐過ラット中脳背側組織のセロトニン量とノルエピネフリン量は、対照ラットの同部位に比較して有意に高い値を示した。
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