本年度も大量の遺体を研究現場に導入し、その処理と標本化を進めた。DICOMフォーマットを基軸にして、世界中でさまざまな解析に利用可能な、標準化された汎用データファイルを作製した。大量のデータの集積に必要な記憶媒体を整備しつつ、標準化三次元情報を快適に閲覧し、解析するための手法づくりに取り組んだ。骨格形状の類似性を定量的に比較する手法、運動機能性や適応性を定量化する解析手法として、遺体三次元データからのモデリングへの試みに力を入れた。三次元化された骨格形態の表面を構成する位置ベクトルの集合体を比較し、形状を把握議論できる扱いやすい研究手法を検討した。最終的な運動のモデル化を視野に入れつつ、それと従来の形態学的データの間の互換性にも踏み込んで検討を加えた。連携スタッフを中心に、代表者・分担者の所属機関と動物園の間に、動物遺体の綿密な研究体制を広げ、三次元デジタル情報の高精度入力を行うとともに、解析に用いやすいデータセットを準備した。医療用画像機器は依然として臨床診断のための出力システムしか備えていないため、CAD・CG関連ツールで活用するべく、標準化したうえで蓄積を開始している。骨格の機能形態学的解析からは、関節の可動性を検討し、それを加味して運動を記載し、骨格筋を動力とした運動モデルを起案、再現性の高い運動の記述に取り組んだ。本年度は、霊長類アジアコロブスの咀嚼装置、非特殊化哺乳類の胎子頭蓋、有尾両棲類の体幹と四肢、走鳥類の後肢などが、運動モデルおよび骨化データの充実した研究対象となった。来年度以降もさらなる遺体収集に重ねる必要があるが、脊椎動物の肉鰭・四肢運動システム、家禽の骨格筋質量分布、野生鳥類の脳神経メカニズムなどが、遺体からの三次元的理論構築の主題として浮かび上がってきた。
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