研究課題/領域番号 |
21658106
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
稲波 修 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 教授 (10193559)
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研究分担者 |
滝口 満喜 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 教授 (70261336)
山盛 徹 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 准教授 (00512675)
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キーワード | 膜透過ペプチド / ドラッグデリバリー / サバイビン / 制癌作用 / 放射線治療 / 移植腫瘍 / アポトーシス / ネクローシス |
研究概要 |
本研究では、p34^<cdc2>-サイクリンB1によるリン酸化部位である34番目のスレオニン(T)をアラニン(A)へ置換したT34A変異サバイビンのN末端に膜透過性ペプチドTAT配列を付加した融合蛋白質を作成し、腫瘍治療におけるTATペプチドによる蛋白質導入技術の有効性と、T34A変異サバイビンのcolon26マウス移植固形腫瘍モデルへの局所投与と放射線照射の併用による抗腫瘍効果について検討した。TATペプチドを付加したサバイビン蛋白質は、腫瘍組織への直接投与で、短時間に腫瘍細胞内へ導入された。X線2Gyの単独照射は、有意な腫瘍の増殖遅延を示さなかった。また、TAT融合T34A変異サバイビンの腫瘍細胞への単独投与も、有意な増殖遅延を示さなかった。一方、X線2GyとTAT融合T34A変異サバイビンの併用は顕著な増殖遅延を示した。組織学的な検索によりX線2GyとTAT融合T34A変異サバイビンの併用による抗腫瘍効果はアポトーシスの誘導によるものであることが示された。さらに、併用により腫瘍組織中の増殖細胞数の減少が観察されたことより、アポトーシス誘導は増殖細胞に特異的に起こることが示唆された。細胞周期関連蛋白質の検出から放射線照射によるG2/M期停止が示唆された。これらの結果から、TAT融合T34A変異サバイビンとX線2Gyの併用による抗腫瘍効果はX線照射で生じる細胞周期チェックポイントに関連したT34A変異サバイビンによるアポトーシス誘導の増強であると考えられた。以上の結果から、TATペプチドによる蛋白質導入技術が腫瘍治療において有効であり、T34A変異サバイビンの投与は腫瘍の放射線治療において、放射線による抗腫瘍作用を増強することが明らかにされた。
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