1. 各種動物における新生児マススクリーニング項目の対照範囲およびカットオフ値の作成 当該マススクリーニングで検査される約30項目について、健康な犬、猫、牛、馬および豚、30頭以上の血液をつかって検査した。これらのデータから各動物の対照範囲を設定した。しかし、幼獣および成獣で値に違いが生じる項目があったため、さらに年齢構成や性別で区分して調査検体を増やして、各区分で対照範囲を設定する必要があると考えられた。 2 .動物におけるムコ多糖症症例の検索 ムコ多糖症6型12疾患においては、軟骨形成不全のために顔貌および体躯に形態的異常を呈することが多い。このような形態的指標に基づいて、数カ所の動物二次診療施設について診療担当者に聞き取り調査したところ、ムコ多糖症と思われる日本猫1症例を発見できた。国内では過去にムコ多糖症症例は認められておらず、今後、確定診断および分子基盤確定のために、本症例を精査する予定である。 3. タンデムマスおよびガスマスを用いたハイリスクスクリーニング 全国の一次および二次診療施設から紹介された先天代謝異常症が疑われる犬猫症例(数十症例)について、血液材料を用いたタンデムマスによる検査を実施するともに、一部の症例については、尿を用いたガスマスによる代謝物の検査を実施した。その結果、これまでに間歇型のメープルシロップ尿症が強く疑われる犬1例ならびにチミン・ウラシル尿症が強く疑われる日本猫2例が同定された。その他にも、タンデムマススクリーニングで異常値が得られた症例がおり、これらの精査を実施している。
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