研究概要 |
植物においてオートファジーは細胞内タンパク質の非選択的分解とアミノ酸リサイクル,老化に働いており,栄養飢餓に応答してオートファジー関連遺伝子(ATG)が誘導されることが知られている.ダイズのオートファジー調節メカニズムを明らかにすることを目的にATG発現変動とエチレン応答について解析した.ダイズのESTデータベースからATG遺伝子のホモログを検索し、ATG8ホモログの4つのアイソフォーム(GmATG8a,d,c,i)に着目して分子種特異的プライマーを作成した。オートファゴソーム形成に関与するGmATG8とGmATG4,エチレン応答に関与するGmACCS, GmERFの発現変動を解析した.またオートファゴソーム形成に働く膜タンパク質GmATG8iとエチレ応答性転写因子GmEin3に対する特異的抗体を作成し、それらのタンパク質レベルの変動をイムノブロットにより調べた.子葉を切除したダイズ幼植物を富栄養培地で前培養したのち,1)富栄養処理、2)飢餓処理(+プロテアーゼ阻害剤),を行った.富栄養処理ではATG遺伝子およびエチレン応答遺伝子の発現レベルはほとんど変動しなかった.飢餓処理+プロテアーゼ阻害剤ではGmATG8i, GmATG4, GmACCSとGmERFの発現レベルは増大した.飢餓処理ではGmATG8iとGmEin3タンパク質レベルも増大した.以上の観察から飢餓処理とあわせてプロテアーゼ阻害剤によるアミノ酸リサイクルの低下がGmATG8iの発現調節に関与すること,飢餓ストレスに応答してエチレン合成の促進とエチレン応答シグナルの活性化がダイズATG関連遺伝子の発現調節に関与する可能性が示唆された.
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