研究課題
ファイトプラズマ(Phytoplasma属細菌)は、700種以上の植物に感染し、世界中で多くの農作物に被害を与えているが、難培養性であるため研究が困難であり、防除法も確立していない。本研究は、ファイトプラズマの培養系・形質転換系の確立に向けた基盤を構築することを目的としている。申請者の過去の研究により、OY系統のファイトプラズマが有する全ての染色体外DNAがクローン化され、塩基配列が解読されている。本研究ではこれらの染色体外DNAをシャトルベクターに利用する予定であるが、マーカー遺伝子等をファイトプラズマ内で発現させるためには、染色体外DNA上で機能するプロモーターを特定する必要がある。そこで、RT-PCRや5'-RACE等の手法を用いて、染色体外DNAにコードされる各遺伝子のプロモーターの同定を目指した。Ca.Phytoplasma asteris, OY strainの昆虫伝搬能喪失株(OY-NIM)では、プラスミドpOYNIM上のORF3遺伝子が欠失しており、またOY-NIM感染植物ではORF3タンパク質の発現が認められないことから、昆虫伝搬能とORF3との関連性が推測されている。しかし、OY-NIMの別のプラスミドEcOYNIM上にORF3がコードされており、この遺伝子が発現しない原因はこれまで不明であった。そこで、OYの弱毒株(OY-M)が持つプラスミドEcOYMにおけるORF3の転写開始点の特定し、そのプロモーター領域を解析した。まず、OY-M感染昆虫のRNAを用いてORF3の5'-RACEを行ったところ、OY-MのORF3は2つの転写開始点を持つことが明らかとなった。次に、ORF3の各転写開始点におけるプロモーターを推測し、EcOYNIMにその保存配列が存在するか調べたところ、EcOYNIMでは2つのプロモーターのうち1つは配列が変異し、1つは欠落していた。以上より、OY-NIMのORF3は、遺伝子の欠失及びプロモーターの機能欠損により発現不能になったと考えられた。
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