研究概要 |
取扱いの簡便さを考慮し,まずウシ初乳および常乳を対象とした。ウシ乳汁より低速遠心分離により乳脂肪,カゼインを除き、得られた乳清画分より超遠心分離法により膜小胞画分を得た。得られた膜小胞画分には,電子顕微鏡観察により直径50~150nm程度の膜小胞が認められた。分光光度法による定量の結果,初乳,常乳6mlにはそれぞれ約1700ng,1000ngのRNAが含まれることが明らかとなった。乳汁には非常に多くのRNaseが含まれることから,得られたRNAは膜小胞に内包され,外部のRNaseから保護されていると考えられる。バイオアナライザーによる分析により乳汁由来膜小胞にはリボゾーマルRNAがほとんど含まれないこと,低分子量のRNAが多く含まれることも明らかとなった。得られたRNAより逆転写反応によりcDNAを合成し,RT-PCRを実施したところ,カゼインやβ-lactoglobulinを始めとする乳関連遺伝子転写産物が含まれることが明らかとなった。また乳関連および免疫関連miRNAが含まれることもリアルタイムRT-PCR法により明らかとなった。 またマウス常乳を用いて膜小胞の調製を上記と同様な方法で行った。得られた膜小胞画分からRNAを抽出したところ,マウス膜小胞にはウシ乳汁に比べ約100倍高濃度でRNAが存在していることが明らかとなった。乳関連遺伝子産物が含まれていた他,調べた16種のmiRNAの存在も明らかとなった。現在マイクロアレイ解析も実施している。またマウス乳汁膜小胞のプロテオミクス解析を試みたが,乳タンパク質が予想以上に混入することから,膜小胞の新たな精製法を確立したのち,再度実施する予定である。
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