新規脳保護薬の創製には、病態時における神経-グリア-血管内皮-白血球間の相互作用を分子レベルで解明し、それを基盤としたインビトロスクリーニング系を確立することが必要である。そこで本研究では、神経-グリア-血管内皮-白血球間相互作用の"場"である血液脳関門(BBB)の病態時機能変化を解析するため、これら細胞を多孔質メンブレン上に三次元的に配置した「インビトロBBBシステム」の確立を目指した。静脈内に投与したミクログリアの傷害脳内への集積が報告されていることから、白血球の遊走を検討する前段階として、最初にミクログリアの脳微小血管内皮細胞(BMEC)の通過を、Transwellインサート(ポアサイズ8.0μm)を用いて検討した。多孔質メンブレン上にBMECを播種し、upperチャンバーにミクログリアを、lowerチャンバーに誘因物質をそれぞれ加え、6時間のインキュベート後、多孔質メンブレン近傍のミクログリアを観察した。その結果、一部のミクログリアはBMEC層を通過し、メンブレンのポアに入り込んでいた。また、メンブレンを通過し、メンブレン下面に接着しているミクログリアも観察された。次に、BMECが存在しない条件下で、マクロファージの遊走を検討した。神経-アストロサイト共培養系がラット腹腔マクロファージの遊走に及ぼす影響を検討したところ、神経-アストロサイト共培養系により、遊走細胞数が有意に増加した。また、NMDAによる神経細胞傷害がマクロファージの遊走に及ぼす影響についても検討したが、NMDA処置群と対照群の間に、マクロファージの遊走の差は認められなかった。今後は、BMEC存在下で、マクロファージの神経-アストロサイト共培養系への遊走をリアルタイムイメージングを用いて観察・解析し、脳実質内への白血球浸潤や血管透過性の亢進に関与する分子機構を明らかにしていく予定である。
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