本研究は、Ca^<2+>動員セカンドメッセンジャーであるサイクリックADP-リボースの合成抑制に起因するオキシトシン(OT)の脳内濃度の低下が精神的発達障害の発症に関与することを実験的に明らかにし、さらに自閉症等の発達障害治療薬開発の端緒を開くことを目的とする。具体的には生物学的にも化学的にも不安定なcADPRの安定等価体をリードとして、細胞膜透過性のプロドラッグの開発を目指す。 当初細胞膜透過性のプロドラック創出のためのリード化合物として、cADPRの炭素環安定アナログではcADPcRを用いる予定であったが、三次元構造等の詳細の検討の結果から、チオリボースアナログであるADPtRがより適切なリードになるものと判断した。そこで、本年度は、cADPtRの効率的な合成法確立に取り組んだ。N1-βチオリボシルアデノシン構造の立体選択的な構築が最大の課題であったが、1-アミノチオリボースがα体とβ体の平衡にあることを利用して、この課題を解決することができた。さらに、リン酸ユニットの導入と大環状ピロリン酸構造の構築を経て、cADPtRの合成法を確立した。 今後、cADPtRをリードとして、プロドラック化、誘導体合成を進めるとともに、薬理活性を評価する予定である。
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