研究課題/領域番号 |
21659025
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
櫻井 宏明 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 准教授 (00345571)
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研究分担者 |
田中 謙 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 准教授 (60418689)
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キーワード | 漢方薬 / 生薬 / Kinome / リン酸化 / ケミカルバイオロジー / 細胞内情報伝達 / ライブラリー / スクリーニング |
研究概要 |
漢方・生薬をはじめとする天然薬物には多様な化学成分が含まれており、個々の化学成分の生物活性が複合的に薬効を規定している。その複雑さ故、活性を単一のターゲット分子に対する効果として捉えるのではなく、生体システムに対する多面的効果として把握していくことが重要であると考えられる。したがって、漢方・生薬の効果を多面的に解析する目的において、Human Kinomeを対象とした解析は、その効果をシグナル伝達の観点から統合的に理解するために極めて有効な手段であると期待される。 本年度は、五味子成分のgomisin Nに焦点を絞り、そのTNF-αやTRAILシグナル伝達経路に対する効果を検討するとともに、その作用機構の解析を行った。まず、ホタルルシフェラーゼを用いたレポーター遺伝子アッセイを行ったところ、TNF-αによって誘導されたNF-kB依存的な遺伝子発現がgomisin Nによって抑制された。NF-kB活性化に関わるシグナル伝達経路に及ぼす効果を検討した結果、gomisin NがIkBαのリン酸化を起こすIkB kinase(IKK)の活性化を阻害することを見出した。次に、最近我々が見出した細胞生存シグナルであるMAPKを介したEGFR経路に対する効果を検討した結果、p38MAPKによるEGFR Ser-1046/7のリン酸化を抑制することがわかった。 以上のように、Human Kinomeを対象とした解析は、個々の生薬によって異なった活性を示すことが明らかとなった。生薬の種類を広げるとともに、細胞内でのタンパク質リン酸化に対する効果(リン酸化プロテオミクス)を実施することにより、漢方・生薬の生物活性の規格化に応用できる可能性が考えられた。さらに、個々の興味深い活性についても、成分同定によるケミカルバイオロジーへの展開も期待される。
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