研究概要 |
多くの遺伝子の発現制御に関与しているmicroRNA(miRNA)は、血中にも安定的に存在している。癌組織におけるmiRNAの発現変動や、妊娠時における胎盤のmiRNAの発現変動が血中miRNAの発現変化として現れており、血中miRNAは病態や生理学的変化のバイオマーカーとなることが近年報告された。喫煙は肺癌などの多くの癌や動脈硬化、心不全、高血圧、糖尿病血管合併症など、さまざまな疾患の原因となっている。タバコの煙には約4,000種類の化学物質が含まれ、酸化ストレスを誘導している。本研究は、喫煙という外的刺激により血中miRNAの発現プロファイルが変動し、それらの標的遺伝子の発現を変化させることが、喫煙と関連するさまざまな疾病の引き金になっている可能性を検討することを目的としている。本年度は、喫煙者と非喫煙者の血中miRNAの発現解析を行った。 金沢大学ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理委員会の承認を得て、健常人男性を対象とし、文書による同意を得た上で、7名の喫煙者と4名の非喫煙者から採血を行った。血漿からRNAを抽出し、マイクロアレイ解析によりmiRNAの発現プロファイルを網羅的に解析した。11名の被験者の比較から、血中miRNAの発現プロファイルの個人差は、それほど大きくないことが示された。しかし、喫煙者と非喫煙者で発現量が異なるmiRNAもいくつか存在していることを見出している。来年度は、さらに被験者を増やして解析を行い、喫煙者に特徴的な発現を示すmiRNAを同定し、それらのmiRNAの標的となる遺伝子を解析して喫煙関連疾患との関係を明らかにする予定である。
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