研究課題
現在トランスポーター活性は遺伝子発現細胞や単離された膜ベシクル画分を用いて解析される。これらの実験系で輸送活性を評価するためには、一定時間における使用した細胞などへ移行した試験化合物を抽出して、みかけの移行量を分析することになる。そのため、細胞膜表面への吸着や結合などもみかけ上膜輸送として定量値に入る可能性も高く、真に膜輸送による取り込みと区別することは困難である。特に、細胞内オルガネラ膜における輸送など、細胞内の局在性も加味した解析はできない。そこで本研究では化合物の細胞内での動態を蛍光標識することによりモニターし、さらに簡便で定量的に解析する手法の樹立を試みた。今年度は以下を対象とした検討を進めた。肝胆管側膜トランスポーターの活性評価にはトランスポーター発現膜ベシクルが利用されるが、肝実質細胞内に基質認識部位を有するMRP2等の肝胆管側膜トランスポーターは細胞内から管腔への移行であり、細胞内環境下での活性を反映させることは容易ではない。そこで対象トランスポーターとしてMRP2に着目し、細胞内のエステラーゼによりMRP2の蛍光基質のCDFへ変換されるエステル体CDFDAを用いた。評価系としては、細胞接着部分に胆管腔を形成し、BEIによって胆汁中移行性評価法が樹立されているサンドイッチ培養ラット肝細胞(SCRH)を利用し、肝実質細胞内から胆管腔へのCDF移行を蛍光顕微鏡下で経時的に観察することにより、Mrp2活性を定量的に可視化して評価する方法論の提唱を試みた。その結果、蛍光顕微鏡観察下、CDFの胆管腔内への蓄積を高い精度と確度で見積もることができることが示唆できた。本手法によって細胞内特定オルガネラ部位で機能するトランスポーターの輸送活性評価への応用の可能性を示すことができた。今後は肺胞細胞や消化管上皮細胞なども毒性面で問題であり、応用を試みる。
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