本研究の目的は、動物モデルを用いて小胞体ストレスによる病態発症機構の全体像を解明し、病態改善に向けた戦略を探ることである。具体的には、ゼブラフィッシュを活用する。異常タンパク質が小胞体内に蓄積すると、細胞の生存が脅かされる。細胞はこれを回避するために小胞体ストレス応答を起こす。最近、糖尿病や神経変性疾患に対する小胞体ストレスの関与が明らかとなってきたが、優れた動物モデルが少なく、その病態発症機序については不明な点が多かった。私たちは、以前の研究で、小胞体ストレスを自然発症する病態モデル動物の開発に成功しており、これを用いた解析を進めることにした。 本年度は、この小胞体ストレスを自然発症する突然変異系統の病態解析と、ストレスモニター動物の開発に取り組んだ。その結果、次の3点が明らかになった。 1この突然変異系統幼魚の肝臓では、脂肪滴とリソソーム残渣が蓄積し、変性を起こしていることが明らかとなった。小胞体ストレス誘導剤処理を行うと、弱いながらも、類似の表現型が生じることも確認した。さらに、生化学的解析から、糖タンパク質の異常も見出した。 2この突然変異系統は、ホモ変異体であっても、成魚になるものがわずかながらも出現することが明らかと鳴った。ストレス負荷をかけた解析はやっておらず、また表現型は明快でないが、ヒト成人モデルになる可能性がでてきた。 3小胞体ストレスをかけると発光するトランスジェニックGFPフィッシュを開発した。
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