研究課題
本研究の目的は、動物モデルを用いて小胞体ストレスによる病態発症機構の全体像を解明し、病態改善に向けた戦略を探ることである。具体的には、ゼブラフィッシュを活用する。異常タンパク質が小胞体内に蓄積すると、細胞の生存が脅かされる。細胞はこれを回避するために小胞体ストレス応答を起こす。最近、糖尿病や神経変性疾患に対する小胞体ストレスの関与が明らかとなってきたが、優れた動物モデルが少なく、その病態発症機序については不明な点が多かった。私たちは、以前の研究で、小胞体ストレスを自然発症する病態モデル動物の開発に成功しており、これを用いた解析を進めた。昨年度に引き続き、小胞体ストレスにより活性化する生体防御システムNrf2に着目した。Nrf2は酸化ストレス防御の主役因子であり、小胞体ストレスとの関連性が注目される。本年度は、昨年度作製したNrf2変異ゼブラフィッシュを活用し、次の3点を達成した。1Nrf2変異系統の致死性を解析した。ヘテロ変異だけでなく、ホモ変異個体も正常に成長し、生殖も問題がなく、Nrf2が生育に必須でない因子であることが示された。2Nrf2変異系統の酸化ストレス耐性を解析した。ホモ変異固体は、過酸化物に対する致死性が極めて高いことが示され、Nrf2は酸化ストレス耐性を担う因子であることが示された。3小胞体ストレス自然発症系統のホモ変異固体は、2週間幼魚で致死となった。詳細な解析を進めたところ、摂食障害が死因と推測された。4Nrf2変異系統と小胞体ストレスを自然発症する系統の二重変異系統を作製した。致死性を解析したところ、二重ホモ系統のみ、2週間幼魚で致死となった。このことは、摂食障害とNrf2には関連性がないことを示唆した。
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