研究概要 |
本研究では、各種Atgタンパク質欠損線維芽細胞において誘導されるオートファゴソームについて、特殊固定法を用いて詳細に形態学解析を行うことで、その生合成機序を明らかにする。本年度は特殊固定法の確立とAtg3欠損線維芽細胞を用いた解析を主に行った。 1. オートファゴソーム隔離膜の観察を目的として様々な固定条件を試した。グルタールアルデヒド、パラホルムアルデヒド、オスミウム酸の至適濃度、バッファーの種類、固定温度、固定時間等の条件設定を行った。他のAtgタンパク質欠損細胞の解析に応用可能なレベルに達した。 2. Atg3欠損線維芽細胞において蓄積される隔離膜を電子顕微鏡観察したところ、隔離膜近傍に多くの小管状構造が見られ、これらの一部は隔離膜および粗面小胞体と連続していた。このことは小管状構造が隔離膜の前駆体であることを示唆する。また、しばしば多重隔離膜構造が見られ、このことはAtg3欠損により隔離膜形成の初期段階の制御異常の存在を示唆する。 3. オメガソームのマーカーであるGFP-DFCP1を安定に発現した細胞株を用いて、免疫蛍光法による解析を行ったところ、Atg3欠損によりDFCP1陽性顆粒が蓄積し、多くはAtg16L陽性顆粒と一致していた。高倍率で観察すると、お互いのシグナルは完全に一致しておらず、DFCP1が上記2で記載した小管状構造に相当するものと考えられた。 以上の成果は学会に発表した。これらを踏まえ次年度は、形態計測およびAtg5,7,16L,FIP200欠損線維芽細胞について解析を展開し、論文作成を進める予定である。
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