摂食行動に深い関連のある視床下部弓状核のニューロペプチドY(NPY)産生ニューロンおよびPOMCニューロン、オレキシンニューロンをもちいて、それらに影響を与える脳内ペプチドを探索することを目指した。それぞれの細胞にGFPを特異的に発現させたマウスを用意し、パッチクランプによる記録を試みた。この系にラット脳から精製したペプチド分画を作用させ、発火や膜電位に影響をあたえる分画をスクリーニングした。 当初、系の立ち上げのために、オレキシンニューロンをもちいてスクリーニングを試みた。HPLCフラクションに含まれる爽雑物によって、アーティファクトが生じてしまうことがわかり、精製方法や、HPLCのバッファー、投与方法などを工夫してアーティファクトの軽減を試みた。一方、orexin-YC2.1マウスをもちいて、カルシウムイメージングによってスクリーニングをすることも試みた。これらの工夫により、ラット脳から、コレシストキニンやノシセプチンなどを単離することに成功した。 一方、作業の過程でオレキシンニューロンがオーファン受容体BRS3を発現していることが明らかになり、それを報告した。この系でBRS3の内因性リガンドをスクリーニングできることが明らかになったので、ラット脳のペプチド分画のHPLCフラクションをもちいてスクリーニングを行った。しかし、既知のペプチドによるシグナルが大きいため、BRS3によるシグナルとの見分けが困難であった。BRS3欠損マウスとorexin-YC2.1マウスを交配させたえられたダブルトランスジェニックマウスの脳スライスをもちいて、orexin-YC2.1マウスから調整した脳スライスによる応答パターンとの比較からBRS3特異的なシグナルを検出することが可能になり、現在精製に向けて作業中である。
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