研究概要 |
ほ乳類や鳥類は,環境温が低下するとふるえなどの産熱反応で体温を正常値に保つ恒温動物である。一方,爬虫類,両生類,魚類は,環境温が低下しても産熱反射が起きず,体温が下がる。しかし,ふるえが脊椎動物の系統発生上いつ生じたのかわかっていない.この研究の目的は,ふるえ様の反応がサカナで生じるとの仮説を立て,検証することである.受精後3日齢のゼブラフィッシュの稚魚を,28.5℃から12℃の水に移すと,尾ひれを連続的に振る相と静止する相が約3秒の周期で交代する間欠的なパターンを示した。このような活動は,恒温動物のふるえに似ている.低温でおきる尾ひれの活動が熱を生むかどうかを測った。外部との熱の流れを遮蔽した箱の中に試験管を置き,12℃の少量の水を入れた.その水の中に稚魚をいれると,ふるえ様の活動が生じ,水温が上昇した。尾びれの動きを生む発振器の場所を探るため,脳脊髄をいろいろなレベルで横断した。後脳と脊髄の間を切断すると,間欠的な動きが連続的なものに変わった.これは,脳の発振器が間欠的な活動を生み,脊髄の発信器が連続的な活動を生むことを示す。成魚ではふるえ様の活動は知られていない.そこで,ふるえ様の活動の成長に伴う変化を調べた.12℃でのふるえ様の活動が持続する時間は,成長に伴って短縮し20日を過ぎるとふるえ様の活動は消失した. 体温の維持は,恒温動物の生存に不可欠の機能である.しかし,その機能が脊髄動物のどの段階で生じたのか全くわかっていない.この研究は,ふるえ様の活動がサカナですでに生じていることを示す.これは,高温動物への進化を示す重要な研究と意義づけられる.
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