研究概要 |
本研究では、ガラニン様ペプチド(GALP)の脳内における摂食抑制作用およびエネルギー代謝亢進作用機序を解析することを目的として実験を行なった。さらにGALPの点鼻法を開発し新規の抗肥満療法を目指すための動物実験を行なった。 まずGALP含有ニューロンと摂食抑制調節ニューロンとの神経相関を機能形態学的に検索し、MPY, POMC, orexin含有ニューロンとシナプスを介して直接神経連絡をしていることを明らかにした。さらにGALP投与による酸素消費量、体温および末梢臓器との機能連関をしらべた。GALPは脳内のグリア細胞を介して熱産生を行なうこと、またその過程にプロスタグランディンが関与していることを生体下および培養実験で明らかにした。またGALPによる脳室内投与実験によって末梢の骨格筋のグルコース取り込みが有意に上昇することも分かった。GALPが末梢の交感神経系を活性化してこれらの作用を行なうことが生理実験で明らかになった。さらにGALPは肝臓において脂質代謝を亢進させる可能性のあることから、現在その作用機序の解明を行なっている。 次にGALPの点鼻投与法を確立するために、動物実験を行なった。まずGALPを点鼻投与した場合の脳内への移行経路をラジオオートグラフィー法で検索した。鼻腔内に入ったGALPは神経を介さずにクモ膜下腔を経て脳内の微小血管内に移行することが分かった。またGALPの点鼻投与によって正常マウスでの抗肥満効果は顕著にみられなかったが、肥満モデル動物(ob/ob)では顕著な抗肥満効果がみられた。この抗肥満作用は点鼻投与を2週間行なっても持続的な体重減少がみられ、とくに高血糖の動物で顕著な抗肥満作用のあることが分かった。このことから、肥満症あるいは糖尿病患者でのGALPの点鼻投与法の開発に本研究がつながると考えられる。
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