研究課題
本研究は、G蛋白質共役型受容体(GPCR)の細胞内輸送や遺伝子発現などを制御することによって細胞表面発現量をコントロールすることを目的とする。平成22年度は、血小板活性化因子受容体(PAFR)を材料としたGPCR共通アミノ酸残基の小胞体(ER)搬出時における重要性に関する研究と、ロイコトリエンB4第一受容体(BLT1)の顆粒球系細胞株における遺伝子発現制御について以下の成果を得た。1) GPCRの膜貫通領域(TM)内にはGPCR間で保存されたアミノ酸残基が幾つか存在する。我々は、これら保存残基がGPCRの正しいフォールディングのために重要であることをPAFRを材料として明らかにした。即ち、保存残基に変異を導入したPAFRはER内貯留したが、特異的リガンドを薬理学的シャペロンとして作用させることでこの貯留PAFRが細胞膜へと移送されたことから、ER内貯留は構造異常に起因し、品質管理機構により搬出抑制されたと推察した。ところで、これら変異体の内、TM6内のPro^<247>変異体は膜表面に移行させたものをアゴニスト刺激した場合、その後の細胞内移送過程にも異常を有することがわかった。これらの成果は2報の論文(JBC, 285, 5931, 2010 ; IUBMB Life, 62, 453, 2010)と幾つかの学会にて報告した。2) 白血球特異的に発現しているBLT1の発現調節に関する研究を行った。白血病細胞森(HL-60)において、レチノイン酸刺激時のBLT1遺伝子発現上昇に関わる転写促進(エンハンサー)エレメントを特定し、さらにこのエレメントには、血球分化や成熟に寄与する事が報告されている転写因子AML1/Runx1が作用する事を明らかにした。このAML1によるBLT1の発現調節は、好中球だけではなくT細胞やマクロファージ等においても機能していると推測される。これらの成果は1報の論文(The FASEB J., 24, 3500, 2010)と幾つかの学会にて報告した。
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Chemical Reviews
巻: 10 掲載確定(印刷中)
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