研究課題
G蛋白質共役型受容体(G-protein coupled receptor, GPCR)は現在約半数の医薬品が標的としている分子で、医薬品発見・開発機関における研究対象の大きな割合を占める。CXCR4はGPCRの一種でstromal cell-derived growth factor 1 alpha(SDF-1alpha)/CXCL12をリガンドとするケモカインレセプターである。ガン細胞の転移や先天性・後天性免疫不全症候群に関与する重要な生体分子である。本研究ではまずCXCR4の多量体化制御領域内における各アミノ酸の多量体化への貢献度の解析から行った。細胞質ドメインC末端付近の多量体化制御領域アミノ酸343-346残基をアラニンに置換した変異体を作成し、多量体化能をBRET法にて検索した。その結果、野生型タンパク質に対するheterotypicおよびhomotypic相互作用の両方についてS346A変異のみが顕著な低下を示すことが判明した。C末端細胞質側ドメインの1アミノ酸変異がGPCRの多量体化を制御している事を証明したのは本研究が世界で初めてである。つぎにS346A変異体を利用して多量体化とCXCR4生理的機能の関連を検証した。緑色蛍光タンパク質をC末端に付加した変異体でS346A変異体の発現動態の解析を行った。その結果、S346A変異体のsteady-stateにおけるエンドサイトーシス効率とリガンド依存的エンドサイトーシス効率は共に低下していた。一方、ERKのリン酸化レベルを指標としてリガンドによるシグナル活性化を解析すると、S346A変異体はシグナル伝達を長期間活性化させる事が判明した。これらを総合すると、多量体化はリガンド結合により活性化されるシグナルのクエンチングを制御する可能性が示唆された。以上より本年度の当初計画を概ね遂行する事ができたと思われる。
すべて 2010 2009 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (13件)
European Journal of Immunology. 40(5)
ページ: 1504-1509
Journal of Cellular Physiology. 221(2)
ページ: 458-468
Antimicrob Agents and Chemotherapy.2009 53(7)
ページ: 2940-2948
Gene Therapy. (In press)
Cancer Science. (In press)
Vaccine. (In press)