臍帯血が造血幹細胞移植のソースとして確立してきたが、臍帯血から間葉系幹細胞の分離は困難と考えられており再生医療のソースとしてはいまだ確立されていない。本研究では臍帯血には間葉系幹細胞よりも未分化な細胞があるのではないかとの推察から、臍帯血と臍帯中の組織幹細胞を効率的に分離し、共培養系を検討することが本研究の目的であり、特にES様細胞の存在を検証することを目的としている。 臍帯からはWharton's jelly、動脈、静脈を各々細切し、explant法にて培養することにより容易に間葉系幹細胞が分離できるようになった。これらの細胞より骨・軟骨・脂肪細胞等への分化誘導が可能であり論文にて報告を行った。一方これまでの研究により臍帯血からは間葉系幹細胞の樹立は困難であった。2009年度は新たに臍帯と臍帯血を同じドナーから得ることに関して当院および連携産科病院にて倫理委員会の承認を得て、産科協力医師より提供者(母親)から文書にて同意を得て臍帯血と臍帯採取を開始し、それぞれ分離を開始した。臍帯由来間葉系細胞の表面マーカーの解析からは、培養早期の細胞ではCD105+CD45-細胞中の一部にCD271+細胞が認められ、より未熟な幹細胞を見出しつつある。一方、臍帯血は解析に必要な十分な採取量が確保できないことが多かったが、HES法での有核細胞分離後にDynabeadsにてCD34+をソーティングし、一部解析した。Preliminaryな結果ではあるが、CD34+細胞中に一部ES細胞に特異的なマーカー陽性の細胞分画が認められた。本分画がVSEL細胞に相当するのか、最近報告されたES様細胞であるMUSE細胞に相当するのかは未だ不明であるが、細胞の性状等について解析数を増やして検討する必要がある。こうしたより未分化な幹細胞の存在は組織再生の機序の解明にも役立つと考えられる。
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