本研究では臍帯血には間葉系幹細胞(MSCs)が非常に少ないことから、MSCよりも未分化なES様細胞(VSEL)があるのではないかとの推察から、臍帯血中のES様細胞マーカーの解析とフィーダーとしても臍帯由来MSC採取を行った。これまでの報告からVSELは、CD34^+細胞中存在するとのことであったが、CD45^-細胞中ではCD34^+SSEA3^+ダブルポジティブ細胞は認めず、各別集団であった。確かにSSEA3^+CD45^-細胞は単核球分画よりもRBC大の小細胞集団に多く存在し、ソーティングした結果円形の比較的N/C比の高い芽球細胞が認められた。しかし、SSEA3^+細胞は全体の0.003%程度しかなく、OP9細胞または同一の臍帯由来MSCs上で共培養系では、それ以上の増殖は認めず、遺伝子発現の検討までには至らなかった。ところが、一方でフィーダーと考えていた臍帯由来MSCにES様細胞の存在を認めることができた。臍帯由来MSCはex plant法にて培養して回収した細胞中にSSEA4^+CD73^+細胞は平均±SD 41.7±23.8%、SSEA4^+CD73^-1.4±0.5%を認め(n=5)、CD73^+SSEA4^+率は、6週まで比較的長期に存在しその後減少した。またRT-PCRの結果では、SSEA4の発現いかんにかかわらず、Oct4/Nanog/SOX2/Klf4//REX1の発現を長期に認めた。さらに、SSEA3+CD73+細胞はSSEA4も陽性であり、P0にて全体の8.48+/-7.66%と高く、その後急速に減少した。近年報告されたMUSE細胞に似ていることから性状を比較しながら、多分化能、特に肝細胞への分化についての検討をしている。今回の検討にてフィーダー細胞にと考えていた臍帯由来MSCに、臍帯血よりも未分化な幹細胞の割合が多いことがわかり、今後再生医療へと発展できると思われた。
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