本研究の目的は、世界中の研究者から希求されているラットES細胞を樹立し、遺伝子改変ラットの実用化を図ることである。そのために、iPS細胞の樹立の際に開発された各種の手法を用いてES細胞株を樹立するとともに未分化状態でES細胞を培養できる条件を確立し、キメララット作製に挑戦することである。この目的を達成するために、本年度は次のような研究を遂行した。ES細胞未分化性をモニターするために、Nanog遺伝子を含むBACクローンを取得し、開始メチオニンにフレームを合わせる形でEGFP-GFP-IRES-Neo^r-pAカセットを挿入したトランスジーンをRed/ET組換え系を用いて作製した。このベクターをラット受精卵に導入したトランスジェニックラットの作製を進めている。これとは別に、ES細胞を未分化に保てることが報告されている試薬類の効果の検証をマウスES細胞を用いて進めている。具体的には、GSK-3阻害剤であるCHIR99021、MAPK阻害剤であるPD0325901及びPD-98059、RasGAP、ERK1阻害剤であるSC-1、FGFR1阻害剤SU5402などの薬剤を組み合わせ無血清培地に添加したものでマウスES細胞を培養し、その効果をES細胞に発現する未分化状態を示すマーカーで検討している。さらに、ES細胞の生殖系列遺伝する効率で検証を進めている。この至適組み合わせを決定し次第ラット胚の培養をおこなう予定である。
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