研究概要 |
生体において、アポトーシスは生理学的,病理学的に極めて重要な役割を担っていると考えられている。しかしながら、生体内において、アポトーシスがいつ、どのような臓器で、どのような生理機能に関わっているか,疾患のどの場面で細胞死が関与しているかは、充分には解明されていない。我々は、このような課題を克服し、生体におけるアポトーシスの意義をより明確にする為に、アポトーシスをモニターできるマウスを作製し、種々の遺伝子改変マウスとの交配を行った。 具体的には、まず、(1)アポトーシス実行に不可欠の現象である「ミトコンドリアの膜透過性亢進」を時空間的に定量評価できるマウス、(2)アポトーシス実行に直接関わる蛋白質分解酵素カスペースの活性化をモニターできるマウス、の2種類を作成した。前者は、ミトコンドリア膜を赤色蛍光でラベルし、膜間腔に存在するSmac蛋白質に緑色蛍光を付加したマウスで、赤色と緑色の解離によって膜透過性変化がモニターできる。後者は、split GFPを用いてカスペース活性を定量評価できるマウスである。後者に関しては,蛍光蛋白質が充分には発現せず、モニターマウスとしては充分ではなかった。 一方、ミトコンドリア膜透過性をモニターするマウスに関しては、(1)マウス由来の線維芽細胞にアポトーシス刺激を加えると、刺激の多寡に応じて蛍光活性が認められる事、(2)アポトーシス抑制分子であるBc1-2を過剰発現したマウスと交配すると、蛍光活性が認められなくなる事、の2点より、アポトーシスモニターマウスとして有用である事が示された。さらに、このマウスを用いて、発生期にアポトーシスが生じている部位を観察したところ、指間の細胞や胸腺細胞においてアポトーシスが生じている事が明らかとなった。
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