研究概要 |
糖尿病の95%以上を占める2型糖尿病はインスリン作用とインスリン分泌の両者の減少により引き起こされると考えられるが、未だその詳しい病因は不明である。日本の糖尿病及びその予備軍は1,600万人存在し、世界の糖尿病人口は2億4,600万人で、日本を含め、世界中で爆発的に増加している。糖尿病は全身の血管が冒され、各種の致命的な合併症を引き起こす。最終段階に至るまで、痛みを伴わないことが多いためsilent killerと呼ばれる恐るべき疾病であり、その対策が世界的にも緊急の課題となっている。 現在までの治療法は、運動療法・食事療法・薬物療法・インスリン治療などが行われているが、まだ根本的な治療法は見つかっていない。そこで最近、将来的な治療法としてインスリン分泌を行う膵β細胞の再生治療やiPS細胞を用いた膵β細胞の移植などが検討されるようになった。これらはいずれもインスリンを分泌するβ細胞を増やす試みである。それではインスリンが結合して作用するインスリン受容体を増加発現させることは糖尿病治療の手段にならないか? 申請者らは最近、レプチン受容体欠損マウス(db/dbマウス)を用い、このマウスにヒト正常インスリン受容体をほぼ全身で発現させると、糖尿病が消失することを偶然発見した。現在の所、なぜレプチン受容体欠損マウスの糖尿病が消失したか明らかではないが、膵β細胞の移植によるインスリン増加と同様に、全身におけるインスリン受容体の増加は糖尿病治療に使用できる可能性があると考えた。またこのマウスは神経鞘腫も発症していることが判明した。これは別系統のマウスでも同様のことが見られるのか興味あるところであるが、現在作製中である。
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