自然に存在するマイクロRNAを模した人工的なpre-miRNA配列(artificial miRNA precursor motif : AMPMと命名)を、pol-II系プロモーターで転写される遺伝子内に組換えることにより、効率的な発現抑制が得られる系を既に確立している。家族性アミロイドポリニューロパチィー(FAP)のTTR(トランスサイレチン)遺伝子の30番目コドンの1塩基置換を対象に、この変異を含む領域をターゲットとしたAMPMとオフターゲット効果を避けるために1個のミスマッチを1塩基づつずらして導入したAMPMのコンストラクトを用いて、HeLa細胞によるtransient expressionの系により解析を行った。その結果1個のミスマッチの導入により、変異アレルについては10%の抑制効果ながら野生型アレルについてはほぼ抑制効果が見られない配列を見出した。しかし2塩基のミスマッチ導入によっては、却って変異アレルの抑制効果が減じることが分かった。さらに、別のAMPMによる本来のターゲットサイトに対する抑制効果増強の可能性を検討するため、上記変異領域以外の領域(3'-UTR)をターゲットとしたミスマッチpre-miRNA配列を持つAMPMを用いて同様な解析を行ったが、却って抑制効果の減少が見られた。これまでのところ3'-UTRへの2塩基ミスマッチのコンストラクトでの検討であり、今後は1塩基ミスマッチの導入による抑制効果の増加を検討する。またCreの導入によるコンディショナルな個体レベルで抑制系の解析を進めるため、loxP配列で挟み込んだNeo遺伝子(3'側にMAZ配列を4コピー設定している)をCAGプロモーターとAMPM-EYFP遺伝子間に逆向きに挿入したコンストラクトを作成した。
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