沈着症や癌を非侵襲で診断することのできる超音波顕微鏡装置の開発をおこなう目的で、H21年度はアミロイド沈着範囲の推定を超音波顕微鏡を用いて可能か否か調べた。 当初の予測は、沈着部位は周囲とは密度が異なっており、音速は固有の値をとるはずであり、アミロイド沈着部位は一般に周囲よりも硬くなることから、音速は早くなるはずであると予測した。 方法としては10ミクロンのパラフィン切片を用いて、種々の臓器に沈着した各種の型のアミロイドーシスについて、音速を測定して画像化し、Congo red染色像との比較を行った。 結果として以下の3点が判明した。 1.アミロイド沈着部位は周囲組織と比べ、音速が早い傾向を示し、沈着部の大まかな推定が可能であった。 2.組織の音速は組織の堅さをほぼ反映していた。 3.既存の組織の違いによる音速の差が大きく、線維組織、平滑筋組織、血液などの組織は音速が早く、脂肪組織、脳組織は音速が遅かった。 以上の結果から、超音波顕微鏡はアミロイド沈着の範囲の推定に有用であり、予後判定や外科切除の範囲の決定に有用となりうる。 今後は更に分解能の改善をおこない、より高い精度で範囲の推定を可能としたい。また、背景の組織による影響が超音波画像に現れるために、正常の超音波画像の作成、各種病態における画像の変化、年齢による組織の硬化の変化、などの情報を集めていく必要がある。 高分解能をもつ超音波顕微鏡開発や画像が描出しやすい補助手段の開発も進める必要がある。
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