2004年に遺伝子全体を含むような数Kbpから数Mbpに及ぶ大きな領域のDNAコピー数が、ヒト個人の間で異なるという大規模コピー数多型(CNV-copy number variation:遺伝子多型としては1塩基多型(SNP)の対極にあるもの)の存在が報告され世の中に大きな衝撃を与えた。現在、CNVと各種疾患との関係が漸次明らかにされつつあり、我々も癌とCNVとの関連を明らかにする目的で、本研究ではcomparative genomic hybridization (CGH)の技術を用いて癌の感受性(罹患しやすさ)に関係するCNVの同定に関する研究を行った。 各種固形癌(子宮癌、大腸癌、胃癌など)について、各患者(20~30例)から採取した癌組織(細胞)と非癌細胞(リンパ球)および当該癌に罹患したことのない高齢者(20人)のリンパ球からのDNAを抽出した。抽出されたDNAはBACアレイCGHによりコピー数が解析され、高頻度にコピー数異常を呈するBACクローンを同定した。癌患者における非癌検体からのDNAで、癌細胞からのDNAと同様に高頻度に出現したコピー数異常部位をまずCNV候補とした。それらのうち非癌患者DNAにおける結果と比較し、癌との関連性が考えられるCNVを絞っていった。このときデータベースとの照合も行った。子宮癌、大腸癌ではこれらの候補CNVを同定することに成功し、本研究の目的は達せられたと考えている。
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