本研究では、ヒトES細胞の培養において、フィーダー細胞を用いて研究を行う。現在用いられている培養液中にはウシ胎児血清(或いはウシ胎児血清代替物)を用い、フィーダー細胞は多くの場合マウス胎児の細胞を用いている。これらのフィーダー細胞をヒト由来の組織・細胞に置き換え、安全な培養システムを構築することを目指す。本年度は昨年度に引き続き1.フィーダー細胞株の樹立と2.遺伝子発現解析による解剖学的部位別細胞株の規格化に関する研究を行った。すでに周産期及び成育期の組織より様々な細胞株を樹立培養してきているが、これまでの成果によりヒト成育期の一部の組織が幹細胞と非常に良好にマッチングしていることを突きとめている。同じ組織内においても部位の違いにより遺伝子発現パターンなど分子レベルで違いがあることがわかってきた。本研究では解剖学的な組織形態の別に分離した各組織から細胞株を樹立し、それらをフィーダー細胞株として使用する過程で、現在使用している牛胎児血清を除去した異種由来物を排除した培養環境でのフィーダー細胞樹立を行った。また、カスタムメードcDNAアレイの作製・解析装置及びA雌metrix社GeneChipシステムを保有し、遺伝子発現解析研究を推進した。既存の細胞株マイクロアレイデータをヒトES細胞未分化維持に働く遺伝子発現を中心にクラスタリング解析を行った結果、最初のふるい分けができることが強く示唆された。各組織別や同組織のなかで解剖学的部位別の非常にユニークな遺伝子発現データを蓄積し、我々が挙げた未分化維持に働く遺伝子発現パターンに影響を与えているか細胞株の特性を検定した。
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