研究概要 |
ヒト、およびマウスの骨髄間葉系細胞、皮膚培養から得た線維芽細胞を用いた。多分化能を有する幹細胞を選び出すために,長時間のストレスをかけることを試みた。ストレスの種類としては低酸素,低血清,無栄養(HBSS buffer),長時間トリプシン処理などである。ストレスで生き残った細胞を造血幹細胞や神経幹細胞で行なう浮遊培養(メチルセルロースを用いた培養)に持って行ったところ,ES細胞由来のembryoid bodyと極めて類似した細胞塊を得る事が出来た。特に長時間トリプシン処理において細胞塊の形成が最も有効であったので,以下,この条件を用いた。 これらの細胞塊はpluripotency markerであるNanog,Oct,Soxなどを発現し,alkaline phosphataseにおいて陽性の反応を示した。 さらにこれらの細胞を浮遊培養からゲラチン上での培養に移すと,neurofilament,smooth muscle actin, alpha-fetoproteimeに陽性の細胞が確認された。従って3胚葉の細胞に分化する能力を有すると思われる。 我々は長時間ストレスをかけた細胞をsingle cell suspension cultureにもっていき,同様の細胞塊を形成すること,それらの細胞はpluripotency markerを発現すること,さらにゲラチン上で3胚葉性の細胞に分化する事を確認した。 細胞塊は一定の回数分裂をすると増殖が止まり,腫瘍性増殖を示さなかったが,形成されたものを接着培養に移すと増殖を開始し,再び長時間トリプシンにかけると一定の割合で細胞塊を形成した。従ってストレス-浮遊培養-接着培養を繰り返す事によってかかる多能性細胞を大量に増やす事が確認できた。
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