研究概要 |
気管支喘息は、アレルゲンにより誘発される慢性気道炎症がその本態であり、免疫応答のアンバランス、すなわち2型ヘルパーT細胞(Th2)への過剰な誘導状態が病因の一つと推定されている。臨床的には、免疫反応を特異的に抑制するステロイドの吸入による治療法が確立されているが、その反面でステロイド依存症の増加、ステロイド不応性の重篤例など種々の問題が存在する。 本研究では,喘息の病態の一つである"免疫応答のアンバランスな状態"に注目し、誘発喘息疾患モデルマウスを用いて、ウイルスベクターによる気道特異的に遺伝子を発現させ、免疫応答の是正を行い、喘息の治療効果を以下の様に検討した。マウスをオボアルブミン(OVA)で免疫し、その後OVAエアロゾルの吸引により感作させ、喘息を誘発した喘息様モデルマウスを用いた。自己増殖能を欠失させたパラインフルエンザ2型ウイルス(PIV2△M)ベクターにより、Th2移行抑制作用を有するインターロイキン(IL)-4のアンタゴニス、および抗酸菌由来分泌蛋白質でTh1誘導能を有するAg85Bを、OVA吸引感作前に経鼻投与し気道粘膜に発現させた。これら因子を発現させ、Th1への誘導(Th1/Th2バランスの是正)を図ることにより、喘息治療を行った。いずれも、コントロール群と比べ、肺胞洗浄液中の総細胞数ならびに総蛋白量などの改善を認め、これらTh1への移行機序が異なる両者において、喘息の症状を軽快する結果が得られた。また、作用機序が異なるこれらの因子による相乗効果を検討した結果、相乗的に効果を有する可能性を示唆するデータを得ることができた。現在、投与方法や濃度などを検討中である。以上から、病態発現部位での免疫バランスの是正により、喘息に対し治療効果が得ら処る可能性が示唆された。
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