研究課題
スポロゾイトはオオシストから放出された直後は肝臓への感染性をほとんど持っていない。蚊の唾液腺に感染することによって初めて感染性を獲得する。感染性の増加は実に1000倍に達すると言われており、したがってこの過程をin vitroで再現することが実用的な培養系確立のための最も重要な課題である。マラリア原虫の遺伝子はスポロゾイト期を通じて、AP2-Spという転写因子によって誘導される。しかしながらAP2-Spにより制御される遺伝子の中でも唾液腺感染に関連する遺伝子(MAEBLなど)と肝臓感染に関連する遺伝子(SPECT2など)では発現プロファイルは大きく異なる。前者のグループは唾液腺感染前に発現のピークを持ち、後者は唾液腺感染後にピークを持つ。したがってそれらの遺伝子の発現調節にはAP2-Spと協調して働きその作用を調節する別の転写因子(調節因子、co-regulaor)が関与していると考えられる。我々はこの転写調節因子の候補として新たなAP2 familyの転写因子を見出した。本転写因子はオオシスト期のスポロゾイトで発現され、その遺伝子を破壊した原虫ではスポロゾイトが形成されない。DNAマイクロアレイで解析したところ唾液腺感染前のスポロゾイトで主に発現する遺伝子の発現が低下していた。一方スポロゾイト期を通じてまたは主に唾液腺感染後に発現する遺伝子の発現はほとんど低下していなかった。今後この転写因子を手掛かりとして唾液腺感染前後のスポロゾイトの遺伝子発現調節機構を解明し、唾液腺感染能を持ったスポロゾイトの培養系の確立につなげたい。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
Cell, Host & Microbe. 7(掲載確定)
Mol. Microbiol. 75
ページ: 854-863
Cell. Microbiol. 11
ページ: 1329-1339