本課題は、防御免疫が抗体非依存的であるとされるリステリア感染に対する抗体治療戦略を構築することを目的としている。この目的に対し、本年度はまず、リステリアの宿主細胞への接着、侵入、増殖、拡散に関与する病原因子であるLLO、Ami、p60、ActA、InlB、FbpA、PI-PLCに対するウサギポリクローナル抗体を作製した。次に、これらの抗体によるリステリア感染の治療効果を検討するためマワスヘリステリアを致死量感染させた後に各抗体を投与したところ、抗LLO抗体、抗Ami杭体、抗p60抗体では有意な治療効果が認められた。次に、抗LLO抗体についてマクロファージ細胞株を用いて抗体の作用メカニズムを詳細に解析した。その結果、抗LLO抗体はマクロファージ細胞内に取り込まれ、細胞内での菌の増殖を抑制することが明らかになった。また、細胞内への抗体の取り込みを阻害するサイトカラシンDを用いた解析により、抗LLO抗体は細胞内でのみ機能し、リステリアの接着や侵入には関与しないことが示された。以上の結果より、抗LLO抗体は高い治療効果を持つが、これに細胞接着や侵入を阻害する抗体を組み合わせることにより、さらに高い治療効果が得られることが予想された。次年度、各抗体の作用機序の解明を含め、抗体を組み合わせることによる治療効果の増強について検討していく予定である。
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