研究概要 |
C57BL/6などほとんどの系統のマウスのマクロファージではレジオネラの細胞内増殖が抑制されるが,これには細胞死(pyroptosis)が深く関わっている.Pyroptosisにはカスパーゼ-1の活性化が必須で,この過程にNaip5遺伝子産物が関与していることが知られているが,マウスのマクロファージが有する、細胞内レジオネラの認識機構についての実体は不明である.そこで本研究では,レジオネラ感染時にNaip5蛋白質を中心とした複合体(「Naip5複合体」)が形成され,これがレジオネラを認識する,と想定し,「Naip5複合体」を同定することを試みる.本年度は,「Naip5複合体」を単離するために,末端にタグを付加したC57BL/6のNaip5(B6-Naip5)を安定かつ高レベルに発現するマクロファージ細胞株をRAW264から作製した.細胞内に取り込んだレジオネラへの応答について検討したところ,B6-Naip5高発現株では菌の増殖抑制,カスパーゼ-1の活性化,および細胞死が認められ,細胞内のレジオネラに応答しているのに対し,B6-Naip5を発現しないRAW264では応答がみられないことがわかった.また,フラジェリンを欠損したレジオネラを感染させたときには,B6-Naip5高発現株においても応答がみられなかった.これらの結果から,本研究で作製したB6-Naip5高発現株において,Naip5蛋白質依存的にフラジェリンが認識されてpyroptosisがおきていることが明らかになった.細胞内のレジオネラを認識する「Naip5複合体」を単離するためのツールとして,この細胞株が有用であることを確認できたので,次年度以降これを使用してさらに解析を進める予定である.
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