研究概要 |
前年度に引き続き,RAW264マクロファージ細胞株でNaip5を安定に発現するクローン(RAW-Naip5)をもちいて解析をおこなった.RAW-Naip5にIV型分泌装置のいずれかを欠損するレジオネラを貪食させたところ,野生型レジオネラに対して誘導されるカスパーゼ1の活性化と細胞死がみられなかった.このことから,宿主のNaip5蛋白質が,細胞内のレジオネラ由来のフラジェリンだけでなく,IV型分泌装置,あるいはIV型分泌装置で宿主の細胞内に輸送されるエフェクターをも認識していると考えられ,これらからなる複合体が形成されていることが示唆された.次に,Naip5のヒトホモログであるNAIPを安定に発現するクローン(RAW-NAIP)を得た.レジオネラ感染に対して,RAW-NAIPはRAW-Naip5とほぼ同様の応答を示したことから,ヒトNAIPもまたNaip5と同様にレジオネラの菌体成分を認識して宿主の応答を誘導し,ヒトのレジオネラ感染の際に防御的に機能していることが示唆された.一方,RAW-Naip5およびRAW-NAIPに対して,カンプトテシンによりDNA傷害を誘起した際の,カスパーゼの活性を測定したところ,カスパーゼ3および7の活性化が阻害されていることがわかった.カスパーゼ1は,Naip5およびNAIPの発現の有無に関わらず活性化されなかった.以上の結果から,マウスNaip5およびヒトNAIPは,マクロファージ内で生じたシグナルの種類に応じてカスパーゼの活性化を調節し,細胞死を誘導したり抑制したりする,生存調節因子であることが明らかになった.
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