研究概要 |
ウイルス複製実験系としてB型肝炎ウイルスのレプリコンプラスミド導入系を用いて、ウイルスの細胞内寄生生活史(replication)を再現させ以下の実験条件とアッセイ系の確立に取り組んだ。その結果1)、deaminaseを強制発現させC to Uのhypermutationを起こさせる事はこれまで確認していた.実際の慢性肝炎をモデル化するには強制発現系では不十分で、肝炎治療時に使われるインターフェロンや局所炎症時に分泌されるサイトカインによってdeaminaseの発現が誘導されhypermutationがおこるか検討した。培養細胞系で各種サイトカインを添加した所、INFα,γでAPOBEC3GとFが発現誘導された。またこの際、3条件とも有為なhypermutationを検出した。この事は、実際の慢性B型肝炎で起こっている事を試験管内で模倣しhypermutationが検出できうる事を示している。2)、次にhypermutationによって作られたウイルスゲノム多様性が局所環境によって選択されうる条件を検討した。臨床上問題となるラミブジン耐性株出現をモデルとして、上記試験管培養系にラミブジンを添加した。各種投与量を検討した所、50uMラミブジン2日間で90%以上のキヤツプシド形成が阻害をみた。50-200uM2日間では細胞の副作用は認めず、50uMを割ると用量依存的にキヤツプシド形成阻害効果が弱まる事を確認した。この実験結果により薬剤耐性が出現しやすい条件を明らかにした。これにより少なくとも短期的に出現する薬剤耐性株を検討する実験系を確立した意義あるものである。レプリコンを長期的に維持するシステムが確立されれば、本研究提案の作業仮説を検証する準備が完了する事となる。次年度に系の更なる最適化を図り、作業仮説の可能性を検証し薬剤耐性出現機構の解明に取りかかる。
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