本研究は、医療者、患者、患者家族間のコミュニケーションに注目し、会話データを収集し解析し、更に、コミュニケーションの新しいツールの開発を目的としている。 22年度は、2つの会話文章の解析を行った。1つ目は、会話文章の中で、あるトピックスに対しての質問や批判的な発言が、その後の会話を継続させるため、抽出した質問や批判がトピックスの価値を高めていると仮定した。アンケート調査にて、トピックスの価値を高めている発言と抽出した発言との一致率を調べた。その結果、57%以上の一致率を得ることができた。今回の研究では、会話文のトピックスの価値を高めている発言の抽出が可能であることを実証した。今後、さらに精度の高い抽出システムの開発を目指している。2つ目は、人の気持ちには浮き沈みがあり、それが会話文の中にも出てきていることから、会話文中での心理的現象、特に心理的葛藤に注目した。患者の会話文中に含まれるポジティブな単語とネガティブな単語を抽出し、相反するベクトルとして時系列に配列し見える化するシステムを開発した。このシステムにより、ポジティブ、ネガティブの返還点を明らかにすることができた。これまで医療界においては、患者の会話内容で、どのような単語や発言に患者の気持ちがより強く反映しているのか明らかにされてこなかった。現在開発を進めているシステムを、医師と患者の間の会話文に抵抗することで、医師と患者とのコミュニケーションに大切な単語や発言を同定することが可能となり、医師のコミュニケーション能力の向上に役立つことができるようになると考える。
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