救急領域では診療の標準化による医療安全への取り組みは他の領域と比較して遅れがちである。このことは救急医療の専門性を可視化し確立する際の障壁となっており、これが非救急専門医が救急医療を敬遠する一員となっている。対象症例が多く、2次救急施設で取り扱われることの多い、来院時に軽症の外傷と判断され経過観察となる症例群を、開発した臨床プロセスチャートを用いて可視化して解析し、他の領域との診療フレーム構造と普遍的に異なる点を明らかにし、併せてそこに潜むリスクを明らかにした。解剖学的傷病名でなく、重症度でエントリーさせるところが従来のパスコンテンツと比較して特徴的であった。本年度はこれまでの結果を受けてさらに、集中治療領域において、初療患者でなく、入院患者への診療アプローチ方法の標準化を目指した。既に集中治療中の症例に対する着眼点について、日々の着眼点の蓄積を行った。これを領域ごとにまとめ可視化するプロトタイプを作成した。いわゆるA(気道)B(呼吸)C(循環)D(神経)を部分へのアプローチを完全に可視化する形をとり、記載も統一することにより、A-B-C-Dの相互の影響と、アプローチの標準化が可能となった。さらにその中でも非救急専門医に対してAの問題について掘り下げを行ってみると、アプローチの得手不得手の原因が明らかにされた。本年度の研究により経験値が高い者の特徴や、経験値が低い者の陥りやすい点、効率的な教育方法、が明らかになり、医療安全に資すると共に教育効果を上げる手法が開発された。
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