研究概要 |
申請者が見いだした新しいタイプの核内受容体コアクティベーター(MTI-II)はステロイド剤と同等に強力な抗炎症作用を有している。本研究は、MTI-IIをステロイド剤に代わる新たな抗炎症剤として開発することを目的としている。そこで、本年度は、MTI-IIにタンパク質細胞内導入配列(Protein Transduction Domain,PTD)を付加した融合タンパク質を分子生物学的に作成し、炎症モデル動物に投与して、MTI-IIが動物レベルで抗炎症作用を発揮するかを検討した。 MTI-IIは低分子量タンパク質(分子量11.5kDa)で、そのままでは細胞内に取り込まれない。そこで、MTI-IIのN末端側に11個のアルギニン(11R)から成るPTDと精製用のヒスタグを付加したMTI-II/11R融合タンパク質(H11RM)を酵母菌で発現させた。H11RMを高純度に精製して、炎症モデルラットに投与した。起炎剤としてカラゲニンを用いた急性炎症モデル(カラゲニン足踵浮腫)ラットの腹腔内にH11RMを投与して、足浮腫容積を測定した。その結果、MTIは濃度依存的に足浮腫をした。この抑制効果は非ステロイド性抗炎症剤(COX阻害剤)であるインドメタシンに匹敵するものであった。 すなわち、MTI-IIは、強力な抗炎症剤としてin vivoで働くことが証明できた。また、MTI-IIは脳血管障壁を通過できないので、長期投与による下垂体-副腎系の機能減退(血中のステロイド濃度が長期にわたり高値の時に起こる脳下垂体の機能減退)も起こさないと予想できる。故に、MTI-IIは強力な抗炎症剤として働くが、ステロイド剤が持つ副作用を持たないと考えられる。よって、MTI-IIを副作用のない、ステロイド剤に代わる強力な抗炎症剤として実用化することが可能である。
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