研究課題
循環腫瘍細胞(circulating tumor cells;以下、CTC)の数が癌患者の予後予測や治療効果判定に有用であるとの報告は多数存在するが、個々のCTCの生物学的性状の解明は殆ど進んでいない。そこで本研究では、個々のCTCの性質を明らかにするために、質量分析法を利用したCTCのオミックス解析の検討を行った。これまで、血液中にごく少数存在するCTCを分離・検出する条件検討を行い、選択的溶血による赤血球の除去、磁気細胞分離法による白血球の除去、及びフローサイトメーターによるCD326(EpCAM)陽性細胞のシングルセルソーティングを組み合わせることにより、血球が混入することなくインタクトなCTCを分離して、抗サイトケラチン抗体を用いた免疫細胞染色によりCTCを検出する実験系を設定した。また、細胞に由来する生体分子を網羅的にプロファイルするシングルセルオミックス解析の条件検討を行い、瀬藤らが開発した新規のイメージング手法である質量顕微鏡法を応用して、個々の細胞に由来する生体分子(主に脂質)を網羅的に解析するリピドミクスの実験系を設定した。現在、上記実験系により、大腸癌患者の血液より分離したCTCと原発巣の脂質組成の比較解析に取り組んでいる。これまで、血液中に存在するCTC数はごく僅かであること、及び単一細胞を解析することが技術的に困難であることにより、CTCの性質の解析は殆ど進んでいなかったが、本研究で確立した実験方法により、CTCの生物学的性状の一端が明らかとなり、癌転移に対する理解が深まると期待される。
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