研究概要 |
妊娠・非妊娠別に牛個体を把握し、それぞれから搾乳することに協力可能な畜産業者から、妊娠(妊娠回数、妊娠週齢・妊娠ステージ)・非妊娠の牛毎に生乳を得て、乳汁中のエーテル抽出分画についてエストロゲン等女性ホルモン(エストロン:E1、エストラジオール:E2、エストリオール:E3)の化学測定を行った。3つの分画のうち女性ホルモンとして最も力価の高いE2が最も低い値を示した。妊娠週令が進むほど濃度が高くなるであろうと想定される傾向は、E1,E3では必ずしも認められず、個体で違いが大きかった。一方、E2では変動の幅は小さいものの妊娠経過とともに上昇傾向が見られた。また、朝と晩の搾乳(日内変動)では朝に高値となる個体の方が多かったが、差は小さい(大きなものでSDが17%程度)ものであった。変動の大きさはE2で比較的大きかった。また、日間変動も日内変動と同程度であった。これらの変動の大小は個体によって大小が見られた。非妊娠牛でも濃度が高い個体があり、総合的な解釈に考慮が必要と思われた。最も高値が得られた検体でも、1.23、0.48、1.21(ng/ml、それぞれE1,E2,E3)と小さな値であり、ヒトでのホルモン補充療法での1日摂取量2-5mgと比較するとはるかに小さな値であり、内服薬使用者においてのホルモン感受性腫瘍の発生率の増加も一定の結論が得られていない事から、影響があるとしても相当大規模な疫学調査が必要であり今回の萌芽研究では対応できないため実施を見送ることとし、次年度の妊娠・非妊娠別の牛乳のエストロゲン類の測定サンプルを増やすことと、それぞれの牛乳を飲用させ、エストロゲン類以外の女性ホルモンの生体作用を総合的に評価する動物実験を充実させることに専念することとした。
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