有機リン系農薬など非蓄積性化学物質による胎児への影響が強く懸念されている。ヒト影響に関する報告は限られているものの、有機リン系農薬の一つであるクロルピリホスについては、臍帯血中濃度に対し出生体重および在胎週数が負に相関することなどが海外の先行研究で示されている。この非蓄積性化学物質の影響を調べる上で、課題の一つは曝露評価法が明確ではないことである。非蓄積性化学物質は生体内半減期は短く、短時間で体外に排出される。母親末梢血や尿を用いた曝露評価では直近の曝露レベルの評価は可能と考えられるものの、胎児影響が懸念される長期的曝露の指標としては疑問が残る。このため、周産期における非蓄積性化学物質の曝露評価法の開発を行うため、小規模ながら疫学的な調査を計画した。具体的には、妊娠女性に調査の目的と方法を説明し、書面による同意を得た後、母親の尿を出産前に3回、出産直後に1回、出産1ヶ月後に1回収集し、新生児から胎便、尿を収集した。新生児の尿は、採尿バッグと紙おむつから収集し、紙おむつは吸収剤よる抽出した。今までに8組の母親-新生児ペアより試料を収集した。化学物質として有機リン系農薬代謝物に着目し、尿を材料とした分析手法を確立し、紙おむつからの抽出と分析法についても検討した。今後、化学分析を進めて曝露評価について検討する予定である。
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