研究概要 |
1,2-ナフトキノン(1,2-NQ)をヒト肺上皮由来A549細胞に曝露すると、細胞内タンパク質との共有結合がみられるが、その化学修飾は時間依存的に減少した。その1,2-NQによる化学修飾は、ユビキチン・プロテアソーム系および各種プロテアゼ阻害剤の能処置でも影響されなかった。1,2-NQの標的タンパク質であるプロテインチロシンラォスファターゼ1B(PTP1B)を事前に1,2-NQと結合したものを、プロフェクトにより細胞内にトランスフェクトした結果、PTP1Bの細胞内減少と比べてPTP1Bと1,2-NQとの共有結合が顕著に減少した。 このようなタンパク質と低分子との共有結合の少の一因として、トランスアルキル化が想定された。そこで、1,2-NQのS-アルキル誘導体(メチル結合体、エチル結合体およびブチル結合体)を化学合成し、精製標品を各種機器分析で同定した。これらをA549細胞およびその溶解液と反応させた結果、おそらくSN2反応を介して、タンパク質のシステイン残基に1,2-NQが共有結合することを見出した。一般たC-S結合は化学的に安定と考えられているが、1,2-NQは容易にトランスアルキル化が可能な親電子物質であることが明らかとなった。さらに、1,2-NQにトランスアルキル化されたタンパクからグルタチオンにより、タンパク質の化学修飾が低下するか否かを調べた結果、グルタチオンによりトランスアルキル化(最終的に1,2-NQのグルタチオン結合体に変換、本結合体も化学的に合成して精製を行い、MSおよびHLPCで同定)されるタンパク質とそうではないタンパク質が存在することが示された。
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