研究課題
発癌は癌抑制遺伝子や癌遺伝子の突然変異に起因する疾患であると信じられ、突然変異を起こす環境要因や、その突然変異を予防することによる癌予防法の開発研究が試みられてきた。一方で、突然変異が存在しなくとも、癌抑制遺伝子の発現がDNAメチル化等のエピジェネティックな要因により減少することにより、発癌に至る経路の重要性が明らかとなった。本研究では発癌予防に最も重要とされるp53遺伝子の下流因子GADD45に着目し、エピジェネティックな作用による新しい癌予防法の確立を目指す。まず、本教室で見出されたGADD45誘導食品成分がDNAメチル化により失活した癌抑制遺伝子p16の発現を回復できるかどうか調べた。異常メチル化によってp16遺伝子発現が消失している数種のヒト癌由来培養細胞をゲニステイン、ケルセチンで処理すると、GADD45の発現が誘導されたが、p16の発現回復はみられなかった。5-アザシチジン処理群では発現回復がみられたことから、GADD45を発現させるだけでは消失したp16遺伝子の発現を十分に回復させるだけの脱メチル化は起こっていないと考えられた。次に、DNAメチル化によりGADD45の発現が抑制されたヒト前立腺癌由来DU145細胞に対し、ゲニステインがGADD45の発現を誘導することを見出した。この時、DNA脱メチル化によりGADD45の発現が誘導されている可能性があり、今後その機構について解析を行う。また、ヒストンのアセチル化もDNAメチル化同様に重要なエピジェネティック制御機構として知られているが、ヒストン脱アセチル化阻害剤と15-デオキシ-△12,14-プロスタグランジンJ_2の併用によって癌細胞内にROSが蓄積し、相乗的にアポトーシスが増強できることを見出した。
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Clin Cancer Res. 16
ページ: 2320-2332
http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/pubmed/