本研究は、遺伝子発現制御機能性マイクロRNA(miRNA)のプロファイリングおよび制御されるタンパク質のプロテオミクス解析を行うことにより、発がん過程を網羅的に把握し、新規発がん予防法開発に応用できるモデル構築を目的として行っている。 平成23年度においては、ヒトケラチノサイト由来HaCaTを中心に、紫外線により誘発されるアポトーシス関連シグナル伝達についての解析を進めた。アポトーシス関連シグナルのうち、P53依存的な経路の構成因子であり、アポトーシスに対して抑制的に働くbcl-2が遺伝子発現、タンパク産生ともに紫外線により増加し、caspase関連経路のうちアポトーシス誘発的に働くcaspase-3ないしcaspase-9の遺伝子発現およびタンパク産生が抑制されている結果を得た。細胞により、紫外線の強度への感度が変わり、紫外線照射量が強すぎると、アポトーシスは誘発されない結果を得た。また、発がん抑制作用が報告されている物質で処理したところ、物質により、低い紫外線量ではアポトーシスが誘発され、一定量以上の強度では、ネクローシスが起こっている可能性を示唆する結果も得た。さらに、DNA fragmentation assay法を用いてアポトーシスへの影響を評価した。これらのデータは、miRNAプロファイリングやプロテオミクス解析と総合的に解析する基礎データとして重要である。 現在、アポトーシスに関与していることが報告されているmiRNAへの影響について、紫外線に曝露した細胞から抽出・濃縮したsmall RNAを用い、miRNAプロファイリング解析を行っている。また、ヒト正常ケラチノサイト由来細胞(HNEK)、乳腺上皮細胞(HMEC)、線維芽細胞(NHDF)および前立腺細胞(PrEC)について、まず紫外線に曝露して適度な照射量について条件を決定し、同様の解析を行っている。
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