研究概要 |
本研究は、歯周疾患や歯周ケアが全身性疾患に与える影響を検証するためのコホート研究の立ち上げに先立って、具体的な作業仮説を提示することを目的としている。調査対象集団は、協力の得られる事業所(従業員約4万人)の全従業員であり、対象者の歯周組織の状態や歯周ケアの状況を調査し、これらの要因が全身性疾患の危険因子、健康因子になりうるかを、既存のデータと新たに収集するデータを用いて検証する。本年度の主要な成果は以下のとおりである。(1)既存のデータから、歯周組織の状態、歯周ケアの状況、全身性疾患の罹患状況などを把握できた28,765人について、相互の関連を分析した。これら対象者のうち、397人(1.4%)に消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)の罹患があった。交絡要因等を考慮した多変量ロジスティック解析の結果、消化性潰瘍罹患のオッズ比は、喪失歯数5本以上で1.41(95%信頼区間1.13-1.76)、歯周炎で1.28(1.03-1.59)、歯周病リスクスコア(1ポイント上昇ごと)で1.17(1.04-1.30)であった。これらの要因以外に、年齢、喫煙、糖尿病罹患、職業性ストレスが消化性潰瘍罹患と関連していた。歯周ケア(歯磨きの回数)と消化性潰瘍罹患について有意な関連は見られなかった。(2)当該事業所の従業員を対象に新たにデータを収集するための調査については、最近の急激な経済情勢悪化のため、当該事業所との調整の結果、次年度以降に延期することとなった。
|