研究概要 |
【目的】地域住民の高齢化は救急需要の急増をもたらし、救急隊の現場到着遅延と救命率低下が危惧されている。新潟県の平成19年から過去10年間の救急出動は65%増加し、現場到着に要する時間は6.2分から7.5分に伸びた。本研究は、地理情報システム(GIS)を用い、救急出動の現状分析と救急隊の最適配置を検討することを目的とする。【方法】本研究は、新潟市を調査対象とし、新潟市消防局より提供された平成19年4月から12月までの救急出動記録より地理座標を特定した21,211件を用い、以下の分析を試みた。(1)救急隊が所属する27消防署所の最短距離圏を作成、6分以内の到着割合ならびに最短距離の救急隊の出動割合を分析。(2)ネットワーク分析と遺伝的アルゴリズムを用い、既存35消防署所ならびに道路沿いに250m間隔ごとに任意の2336点における27救急隊の最適配置を解析、現場到着短縮時間をシミュレーションにより算出した。【結果】救急隊の6分以内の現場到着割合は郊外地域において低く、一方、救急隊の最短距離出動割合は救急要請の重複が顕著な市中心部が低いことから、救急出動の地域間格差が明らかとなった。最適配置分析より、既存の35消防署を活用した場合、27救急隊のうち4救急隊を配置転換することにより、現場到着までの平均時間を5分21秒から4分24秒に短縮し、かつ、地域格差を軽減することが可能であると示された。任意地点2336候補地から選択した27か所は、現場到着時間が4分10秒に短縮されることが推察された。【考察】救急隊の現場到着時間の短縮は、重症患者の救命率の向上を図る上で重要な課題である。本研究により、消防署所間の救急隊の最適配置により効率的な現場到着時間の短縮が示され、加えて、既存の消防署を活用することにより費用対効果の高い政策策定が十分可能であることが推察された。
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