平成21年度には、心臓周囲脂肪測定の再現性の検討を行った。2001年から2008年までで心臓CT検査を複数回実施したもののうち、実施の間隔が2年以内のものを再現性の検討に用いた。対象として選択された36名のうち体重の増減が5%以上あった3名については、心臓周囲脂肪量の顕著な変化を伴っていることが懸念されたため、再現性の検討には適さないと判断し、今回の検討から除外した。結果として33名の対象者で心臓周囲脂肪量の測定を行った。 測定にはFramingham Studyと同様の方法を用いた。具体的には「心臓周囲脂肪」を心膜の内側のすべての脂肪組織と定義し、心尖部レベルから肺動脈幹レベルまでの全てのCT画像を解析した。 今回、再現性の検討を行った指標は「心臓周囲脂肪体積」及び「横断面における心臓周囲脂肪最大面積」である。後者に関しては心臓周囲脂肪最大面積のCT画像のスライス位置が1回目と2回目で1cm以上ずれていた4名を除外して検討した。 再現性を検討した結果、心臓周囲脂肪体積は1回目の測定は77±29cm^3(n=33)、2回目の測定は79±30cm^3(n=33)であり、相関係数は0.959で良好な再現性が得られた。また、横断面における心臓周囲脂肪最大面積は1回目の測定は12.9±5.6cm2(n=29)、2回目の測定は13.1±5.5cm3(n=29)であり、相関係数は0.940で、こちらも良好な再現性が得られた。このことから、どちらの指標も心臓周囲脂肪評価に適した有用性の高い指標であると考えられる。 また、体重と心臓周囲脂肪体積にはほとんど相関がなかった(R=0.33)ことから、心臓周囲脂肪体積は独立した循環器疾患危険因子である可能性が高い。今後の研究でこれらの指標とその他の循環器疾患危険因子との関連を明らかにする意義は大きいものと考えられる。
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