混合資料からの情報抽出には、まず、(1)その資料は混合資料であるのか、もし、その場合(2)何人の資料が混合しているのか、さらに、(3)被疑者や被害者など当該と思われる人が含まれているのかというおよそ三段階で、分析を進めるのが適切な分析方法であると思われる。今回は、混合資料と判断できるのか、また、何人の資料が混合しているのかなどについて、現在わが国の法医鑑識領域において、標準的に用いられている15ローカスのSTR型を判定するアイデンティファイラー検査において検討した。まず、コンピュータにより日本人アリル頻度にほぼ従うように制御して作成した16万人分の個人STR型を作成した後、このSTR型を2人から8人まで合わせて各2万組作成して、"混合資料"の型として、その資料におけるアリル検出数を分析した。その結果、関与人数が増えれば検出アリル数も増加していく傾向がみられたが、関与人数の増加に対して、検出アリル数の増加する割合は次第に減少し、5人から8人で1ローカスあたりの検出アリル数が10以上のものは少数であり、最大でも8人混合でD13S51で検出アリル数13の1例に留まった。また、2人分から5人分の型を混合して20組の"混合資料の型判定結果"を作成し、2人から8人までの関与人数とした場合の作成可能確率を算出して検討した。検出アリル数から算出した作成可能確率の比較により混合資料における関与人数の推定が可能となったが、検出アリル数が多くなると最大確率が元の関与人数と一致しない割合が増えた。実際の混合資料では、混ざっているDNA量が極端に低いものもあり、アリルドロップアウトが起こったり、他の混合DNAのスタターバンドと判定され、正確な結果の解釈ができなくなることも考えられる。22年度は、実験的に混合比を変えた混合資料や微量資料における型判定を行って、関与人数に関する検討を行っていく予定である。
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