研究概要 |
小腸は消化・吸収を司る臓器としてエネルギー代謝のフィートステップを担っており,生体の代謝機能に重要な役割を果たすと考えられる.しかしながらこれまで良い小腸実験モデルは存在しなかったことから,本研究は糖・脂質代謝研究に有用な「真に使えるin vitro小腸モデル」の作成とその有用性の検証を目的としている.本年度は小腸モデル細胞として汎用されているヒト結腸癌由来Caco-2細胞と,特殊な多孔質膜上で細胞を生体内に近い立体的な状態で培養できる3次元養容器を用いて実験モデルの構築を試みた.0.2×10^6個のCaco-2細胞を直径30mmの上記培養容器に播種し,1, 4, 7, 11, 14, 16, 18日後の細胞数をWST-1アッセイで確認した.この結果,7日後には吸光度がプラトーに達し,16日後までほぼ一定の値を示した.この間,細胞塊や浮いている細胞などは観察されず,数日間に渡り安定したモノレイヤーを形成することが示唆された.小腸粘膜細胞はアミノ酸の一種であるグルタミンを主要なエルギー源として利用し,消化された単糖類は小腸粘膜内ではほとんど使われることなく門脈へと運ばれることが分かっている.現在,この性質を利用して3次元培養を行った際のApical AccessとBasolateral Accessのグルコース濃度およびグルタミン濃度をそれぞれ専用キットを用いて測定を進めており,小腸の機能を模倣できるかを調べている.今後本モデルを応用し,ヒト肝癌由来Hep G2細胞などを共培養することにより,代謝臓器間連携における小腸の役割について解明を試みる.
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